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思い出の少女探偵シリーズとK。

ある日の夕方、帰りの車中で突然小学校時代にフラッシュバックした。

『ラークスパー荘の謎』…

このタイトルが急に浮かんだのだ。

小学校の図書室で、当時小学校5年だったと思うが、競うようにあるシリーズ本をかりまくった時期があった。
http://www.aga-search.com/831-10nancydrew.html

記憶では、肌寒い秋の放課後の図書室。

あまり読書を好む子どもはそうたいしていない…ワタクシも含めてそうだった。

だから、図書室はいつも閑散としていてもの寂しそうな空気の古い記憶。


となりの席の男子がとても積極的で、よくお誘いをうけた(笑)

『夏になったらプール一緒にいこう』『どっかの公園へ遊びにいかない?』『休みの日に待ち合わせして出かけない?』『バスに乗って街で買いものしよう』

もう毎日うんざりするくらい。

その男子は女子からとても人気があった。

顔だって性格だって、勉強だってなんでもできた。

男子のくせに左利きの手からさらさらと生み出される文字はきれいで印象的だった。 

唯一、運動は中くらいだったような…

のちに憤慨することになる小5のワタクシは、そのお誘いを自分だけにしているとばかり思い込んでいたのだ。

『なんだ、Kはみんな女子なら誰でも誘っているんだ。』

それがわかってからは、さらに冷たい態度で反したものだった。

なぜか、委員会なるものがいつもかぶるのが気に食わなかった。

よく一緒になった委員会は、『図書委員』

クラスの男女2名ずつなのだが、推薦が基本だったので希望だけではなれないもので、高学年になると『図書当番』なる貸し出し係りの仕事が放課後にまわってくる。

その頃のことも、その『ラークスパー荘の謎』のタイトルと一緒に思い出していた。



まぁ、そんなお誘いも6年生になる頃にはさすがにしなくなってきたが、そっけないワタクシは相変わらずだった。

その頃には『腐れ縁』的な位置でなんでもいい合える仲間のひとりになっていた。

Kは早口でかなりの本好きだった。

今考えると、図書委員になれたのはKが推薦したからなったようなもんだ。

ワタクシは当時、本なんて読む気はまったくなかったし、また興味もなかった。

正確には買ってもらえなかったので、1冊で我慢したまま高学年になったような子どもだ。

そんなワタクシは、図書当番の時はいつもKと組むため、まったくおしゃべりの相手もしてくれないほど、Kが夢中になって読んでいたのが、その『ラークスパー荘の謎』少女探偵ナンシードル―シリーズだった。

パパが弁護士のお譲さん探偵というミステリー児童書で、1930年代初版のキャロリン・キーンが著者。80年たった今も新作が出る本国アメリカから世界でも少女たちに人気のあるシリーズだ。戦後50年代に入って日本でも翻訳され、マーガレット・サットンの少女探偵ジュディーシリーズと共に人気があり、このナンシ―シリーズは56編、170作品もあったそうだ。(だから読破していなかった)90年代を境に新刊が入手困難となり、図書館でしか読めない時期もあり15年前に金の星社からフェア文庫で6冊だけ復刻したそうだ。6年前には新シリーズの邦訳が開始された。(ムスメに買ってあげよう!)

そんなにおもしろいのかと、Kにバレないようにこっそり借りてみた。

読書なんて慣れないから最初は読み進めるのが困難だった記憶があった。

しかし、元来の負けず嫌いな気性がてつだってむきになって家で気合いで読み進めた。

そのうち、景色のスクリーンが脳裏に浮かび、少女ナンシ―が日常の事件(残忍な殺人事件とかそんなのはなく、失踪事件や盗難事件といったオサレな海外のお話しにワクワクドキドキしながら、他のシリーズが返却されると次々に借りてくるようになった。

『手帳の秘密』『幻の白馬』『消えたプリマドンナ』『オルガンを弾く亡霊』『湖上の幽霊船』『ビロードの仮面』…タイトルだけでも小5の子どもはノックアウトされたものだ。

もうその頃には隠れて借りることもなくなるほどナンシ―にのめり込んでいた。

シリーズ本は、図書室にある全巻読破した。

そのうちあきたらず『江戸川乱歩シリーズ』に手がのびた。


Kは、本嫌いなワタクシの変貌ぶりにいぶかしく思った様子だったが、自分と共通のツールが持てたことに喜び、こっちの方がおもしろいよと指南するようになった。

そのうちに『僕のことすきなんじゃないの?』と言われたことがあり、激しく反論した憶えがある。

実際は、未だに自分でもよくわからない。

Kは小6の秋に松戸へ突然引っ越していった。

本当に突然だった。

最後の日、Kの帰る後ろ姿を校庭の一番高い丘から見た映像を今も思い出せる。

そのときの気持ちならわかる。

意地を張って憎まれ口しか言えなかったことや、もっと本の話しもしたかった。
Kの家にも皆誘われたけど絶対にいかなかったこと、やさしく声をかけてくれるKにいつもそっけない態度でしか返すことができなかったこと、仲間だったススムのお祖母ちゃんの具合が悪くなり、真っ黒な顔したススムがやけにしょげているとき励ましに行こうと提案してきたのにちゃんと聞いてあげなかったこと…みんな後悔した。

転校の日、思い切って大切にしているおじいちゃんのおみやげの形見だった『海外の硬貨』を何枚か餞別で渡した。

引っ越し後、何度か電話をしたこともあったけど、中学生になる頃にはすっかりKのことは忘れてしまった。

いや違う、思い出した。

引っ越し後の次の春休みに松戸から電車に乗ってわざわざ地元の大きな公園で会う約束をしたことがあった。

約束した場所に図書委員仲間と行くと…ワタクシを本気でいじめる悪グループの男子メンバー3人と一緒に仲良くボートをこいでいるではないか!

もう怒り心頭のワタクシはそのまま会わずに帰ったのだ。

それが最後だった。

あのグループと仲良くしたことなんてなかったのに…寧ろ、Kはワタクシとつるんでいることをネタに随分いじられていたではなかったのか?!

その本意も未だに不明である。

ほんと、機会があったらそこんとこヤツらに問質したい。

のちにかなりの読書好きになったのは大人になってからで、この時の記憶があったからこそ本は想像力を掻き立てるツールであることを思い出せたから。


そう、Kのおかげだ。


今もKは女ったらしで、誰にでもやさしく声をかけているのだろうか。

…もう立派なオヤジなんだけどね(笑)





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by fairytalem | 2013-03-22 12:22 | つぶやき | Comments(0)